パターン・裁断19年目
内藤 久美私の祖母が、着物を仕立てる仕事をしていて、幼い頃から洋裁やものづくりに興味があったため、仕事にするなら服飾関係だなと思っていました。専門学校に入るときも、やるなら作る方だと思っていたので、その方面で勉強して、辻洋装店を知りました。
専門学校の三年生の時に、辻洋装店のインターンを2週間ほど受けさせて頂いたのですが、その時の社員の方々がとても親切でアットホームなこと・・・!もっとも決め手になったのは、インターン終盤に、アトリエから本社へ移動中、アトリエ主任とすれ違った際に、最高の笑顔で挨拶して頂けたことです。ああ、もうここしかないなと・・・こんな一学生にしてくださったあの笑顔は、今でも忘れていません。
入社すぐは班に入り、アイロンからスタートし、2年目以降からはミシンをやっていました。
そして5年目くらいから班長をやらせて頂きました。その後、9年目の途中から本社勤務になり、入社してからは19年目になりました。
現在はCADを使って、先上げやサンプルの工業用パターン作成と裁断までの仕事をしています。
主な取引先様とのやりとりを始め、色々なメーカー様とコミュニケーションをとることもあるので、とてもやりがいがあります。
とにかく高級なものを取り扱っているので、一流の技術に触れることができて、自分もそれに挑戦できるチャンスを頂けていること、そして誠心誠意をもって仕事ができる環境があることです。あとは、取引先様のコレクションを見させて頂く、貴重な経験ができることです。
縫製工場というと何百人という人々が列をなして、ライン生産していくというイメージでしたので3~4人体制で一着を作り上げていくという点では、想像していたこととギャップがあったのを覚えています。
先上げやサンプルは、量産と違い、ほとんど一着で動くので、これから辻洋装店で取り扱う製品の様子を、パターンから生地、付属、裁断、縫製へと、色々な視点から細かく見ることができます。
それにより、それぞれのメーカー様のやり方や、特徴が総合的に見ることができるので、とても勉強になり、面白いです。更に、どういう意図でこのやり方なのか、どこにこだわりがあるのか、当社では考え及ばないことがたくさんあるので、メーカー様とコミュニケーションを取ることもたくさんあります。そこで納得しながらいい物作りをしていけることに、とてもやりがいを感じています。
私としましては、この仕事に於いては、“失敗しないようにする”という感覚が強く、あまり成功したという体験は感じていませんが、逆に失敗するととんでもないところからやり直したりと、失敗体験の方が印象に残っています。例えば、初歩的ですが、パターンの縫い代付けを間違えてしまい、気づかずに裁断までしてしまい縫えず…
更には裁ち直そうにも、高級な生地故、生地残がもう無く、メーカー様に追加の生地をいただく・・・という恐ろしい体験はもうしたくありません・・・。
女性がほとんどの会社なので、いわゆる昼ドラのようなドロドロした人間関係なのかと思いきや、全くそんなことはなく、上司を始め、先輩方はとても優しく、時に厳しく、そして楽しく仕事ができる雰囲気だと思います。
感じ方はそれぞれとは思いますが、素直で真っ直ぐな人が多いと私は思っています。
仕事の精度を高めるために、社内では勉強会を学年別に行ってテストもしています。直接、仕事に関わっていない、本社勤務の人も学年ごとの勉強を一緒にして、テストも受けたりと、必死に頑張っている姿をよく見ます。日々の仕事に追われ、硬くなった頭を柔らかくするための改善セミナーや、仕事での環境づくり及び人生に於いても勉強になるモラロジーの受講、先輩との“飲み会”という名の勉強会(不定期)など社内には、学びの場がたくさんあります。
生かすか否かは自分次第ですが…。
私の上司は、私の仕事場のすぐ隣の椅子に座っておられます。
この辻洋装店の全てのことをまとめている、統括部長です。毎日毎日、私のちよっとした質問や相談、更にはくだらない話まで聞いてくださる、とても素敵な上司です。いつも社員のことを気遣っていて、それでいてやはり素直で真っ直ぐで、理不尽なことや、間違ったことは嫌いで、正してくださいます。
メーカー様に対しても誠意を持って接している姿勢は、私も見習わなくてはといつも思っています。
このような上司がいて下さるからこそ、素直で真っ直ぐな社員が増えていくのかなと思います。
先上げ・サンプルのパターンを工業用にする時には、自分もアトリエでの経験があるので、縫いやすい縫い代の形はどんなものか、縫製であまり悩まないようにするには、どのようにしたら良いかと、メーカー様の求めることからズレていかないような加減で、常に考えています。自分だけでは全く見えないこともあるので、時には上司に、先上げ縫製担当者に、アトリエ主任にと、他の視点からも考えて下さる人への、“聞く”姿勢も意識しています。
取引先様によっては、辻洋装店では経験が浅い事柄をやることもあり、それがだんだんと増えてきました。
更には、難しい生地も増え、対応に悩むこともあります。
そういった、新しいことに臆することなく、時には謙虚な姿勢で教えていただきながら、痴がましいことですが、少しづつでも「お任せ下さい!」と言えることを増やしていくことが今の課題と思っています。
とにかく、コミュニケーションをとることが、本当に大切だなと思いました。アトリエにいた頃もそうですが、相手が何を考えて仕事をしているのか、自分はこうしてほしいが、相手はそれが今できるのか、やるべきか等、コミュニケーションをとって初めて気付くことがたくさんあると思います。
本社勤務になってからは、それがより一層濃くなったようにも思います。
社内でのコミュニケーションはもちろんですが、取引先様とは、“言葉遣い”という社会的常識の面でも試されることが多く、自分の語彙力の無さにがっかりすることもあります。とにかく、相手の言っていることを聞き理解する、こちらの言いたいことをわかりやすく伝える、とてもシンプルなことですが、難しく、まだまだ学び途中です。
私が今の場所に就く前に就いていた先輩が、とても凄い先輩で、とにかく仕事が早く、まさに“できる先輩”でしたので、目標はその先輩です。デザインにもよりますが、一日に、自分の理想とする型数をまだまだこなせていないので、もう少し早く正確にできるように頑張りたいです。
“好き”というのは色々あると思いますが、私がここまで続けてこられたのは、やはり“好き”が根底にあったからだと思います。
この仕事は、思った以上に体育会系で、上下関係もあり、声を出すこともたくさんあります。
お金をいただきながら同時に、たくさん学べて、貴重な経験がたくさんできて、自分の好きの裾野が広がりました。好きだからこそ辛いこともありますが、やりきった時の達成感はヒトシオです。
自分のやりたいことを見極めるのは大変ですが、一度、見学やインターンでも辻洋装店をご覧いただきたいと思います。
こんな社員ですが、お待ちしております!