BLOG 2021.05.18

【費用は？】アパレルメーカーが縫製工場で洋服を作るまでの流れ　その1

（2021年5月追記）

業界では当たり前すぎてわざわざ文章にすることも憚られるようなことが（サプライチェーンの一つ川上に行くだけで）意外にも全く知られていないこと、結構あります。

新しいアパレルメーカーや専門店からの問い合わせも増えているので、何回かに分けてこんなタイトルで書いてみます。

作りたい商品はどんな商品か

ものづくりの視点から洋服を大きく分けると3つに分類できます。

【布帛】・・・主に縦糸と緯糸からなる織物を裁断して縫製します。辻洋装店は布帛の重衣料（ジャケット、コート、ワンピースなど）を得意としています。

【ニット】・・・編み物。セーターは主に横編み機で成型されたパーツをリンキングミシンで編みつないであります。

【カットソー】・・・主に丸編み機で編まれた反物状の生地を裁断して縫製（カット＆ソーイング）します。Tシャツ・スウェット・ジャージなど。生地の仕込みなど川上の背景をもつ会社もあるようです。（二友会の仲間に教えてもらいました）

それぞれ業界が違うと言っていいほど違います。作る会社も設備も技も人も違います。
“作りたい商品がどこに属するのか”でアプローチする分野が変わってくるのです。

なのでここでは【布帛】の縫製工場のことを・・・。
シャツやボトムはほとんどが専門工場です。他のアイテムは縫えないと思います。
加えて婦人服か紳士服か、または商品のグレードによっても工場の棲み分けがされています。
普段、カジュアルウェアを縫っている縫製工場でフォーマルウェアは縫えないと思っていいでしょう。
高級素材の取り扱いなどは、一朝一夕でできる企業文化ではありません。
辻洋装店は今のところ【布帛の婦人服の高級重衣料】を得意としています。
高級重衣料の分野ではその縫製工場独自の工業用パターン作成が必須になります。

※ある程度の規模の工場を想定しています。熟練職人が数人でやっている、小さな工場もあります。

縫製工場の探し方

縫製工場の棲み分けを知ったら、作りたい商品を一緒につくる縫製工場を探します。
商品にそれほどこだわりがなく、とりあえず形にしたいというのであれば商社などにサポートしてもらうのも一案です。
当然、加工賃（縫製代金のこと）とは別のコストがかかってきます。

縫製工場を探したり、頭の中の作りたい服を説明したり、出来上がったサンプルがイメージと違ったり、
“服づくり”って結構大変です。

『シンプルな黒いジャケット』を作れる縫製工場はたくさんあるけど、“イメージ通りの高級感”や“品のある雰囲気”を服に纏わせることができる縫製工場は少ないかもしれません。

ある程度のアパレルメーカーであれば、通常いくつもの縫製工場と取引していて、
商品ごとに工場とのマッチングを考えて仕事を割り振っています。

超小ロットだとこんなサービスもあります。

業界新聞にも全国の縫製工場が掲載されています。

地域によっては組合もあるのでそこから探すこともできます。

また、可能な場合は“詳しい人に聞く”のが一番早いでしょう。
狭い業界ですのでHPには載っていない情報が得られるかもしれません。
そもそもHPを持っていない縫製工場が非常に多いのですが・・・。

もし作りたい商品に（イメージ、カテゴリー、価格帯などが）近い既存のブランドがあれば、それを元に生産背景を探るのも一つです。似ている既存ブランドを縫っている縫製工場を探すわけです。
もしかしたらこれが一番の近道かもしれません。
各縫製工場のHPに得意とするアイテムや主な取引先が載っているハズなので（なければ写真などで判断）細かくチェックして、その縫製工場の特徴を掴みましょう。ハンドステッチなどの特殊ステッチや加工が必要な場合は設備のチェックも忘れずに。

そしてパートナーとなる縫製工場は“通える距離にある”ことがとても大切です。
こんなに物流が発達しているし手軽にweb会議もできますが、それでも“すぐ行ける”のは大きなメリットです。
現物を手に取りながらお互いに意見を交わしたい場面がすぐにやってきます。
初めのうちは特にですが、打ち合わせの頻度は製品の完成度に直結するのです。
（“目の届くところで作っている”という安心感は失敗の経験がないと実感しづらいでしょうか、、、）

縫ってもらいたい縫製工場が見つかったら、アポイントを取って見学に行ってみましょう。

次回はアプローチのタイミングとその際に必要な情報について書こうと思います。

その2　　その3　　その4　　その5　　その6　　まとめ

東京都内の高級婦人服縫製工場三兄弟の三番目
ツジゴウ