先日の取材が記事になってアパレル工業新聞のJUKI企画コーナーに掲載されました。
辻洋装店(辻庸介社長)は東京•中野の閑静な住宅街に本社とアトリエ(縫製)があり、婦人プレタの都内工場として知られています。「洋服づくりは人づくりの道」をモットーに若い感性のある技術者を育成する一方、都内の婦人服工場ではいち早くCAD/CAMを導入するなど合理的なモノ作りにも取り組んでいます。JUKIのフルデジタル仕様・ダイレクトドライブ高速本縫い自動糸切りソーイングシステム「DDL-9000C-FMS」も昨年一月に三台導入、アトリエのリーダー3人が実際の縫製で使いながら効果的な活用方法を探っているそうです。現場を預かる辻吉樹専務にお話をうかがいました。
-若手の技術者育成をベースにしたモノ作りで定評があります。
縫製部門のアトリエは三十一人で三〜五人の七チームがあり、各リーダーのもとで新人をはじめ若手社員は指導を受けながら育っていきます。スキルアップのため新人や二年目、三年目、四年目までを対象に年二回、独自の社内テストを行なっていますが、これもリーダーが試験官を務め、内容もリーダーたちが決めています。リーダー全員が見ている中で試験するわけですから、みんな緊張しますが、試験結果は良くなくても、そんな機会を通して技術を高めるというプロセスが大切なために行っています。今は丸縫いをできる社員が三割強いますが、素材がますます難しくなり、そのレベルに達するには六年くらい掛かります。一番若いリーダーも昨年から務め始めた六年目の社員です。りーダーになるのは大変だけど、人を育てる、人に教えることができて初めて一人前になるという考えです。
-そんな技術者育成に力を入れながら、新しいデジタルミシンも導入されています。
今は時代が急速に変化し、車をはじめあらゆるものがどんどんデジタル化しています。だから便利さだけを享受するのではなく、その成り立ちも知っておかないと、新しい技術が次々に応用され、我々の縫製でもどんなミシンにデジタル技術が使われて来るか分かりません。だから、そういうことを知っておきたいと。一方で古いミシンのままコツコツ縫っているより、若い人たちが多いので最新のテクノロジーが入っているという方が刺激的だし、最新鋭の機器やシステムを入れてこれからも前向きにやっていくんだという会社の意思を示すことができます。合理的にいいモノを作ろうと思っているんだと、社員のモチベーションアップにも繋がるだろうといったことも期待しているんです。
-デジタルミシンの9000Cはどういう使い方をされていますか。
昨年一月に三台導入し、現在、アトリエの若手、ベテランのリーダー三人が現場で使っています。当初は一つのグループのミシンを全て9000Cにしようと考えたのですが、人によって使い方が違うようなので、今のところは三台別々のリーダーに使ってもらって、新しい使い方はないか、工夫した使い方はないか、将来デジタルミシンを会社全体に入れることを前提に彼女たちに活用方法を確認してもらっています。
-ファッションもそうですが、様々な分野でデジタル化が進んでいます。
タブレットにベテランの技術を動画で残して教えたりしていますが、それは補助的な役割で、基本はリーダーがちゃんと教える、意味を伝えながら教えるということです。技術を伝えるというのはやはりアナログで体育会系ですよ。一方でデジタル化というのは技術者育成には関係なく取り組む必要があります。仕事を合理的にやるときに、いいミシンや機械があったりして生産性を高めるものがあれば、企業として投資をおろそかにはできません。人材育成と設備投資をバランスよくやっていかなければいけないと考えています。
三人のグループリーダーの話
「データは今十三個保存しています。結構追加オーダーがあるので、呼び出して使うケースが多いですね。このミシンは膝上げレバーがなく、使っているうちになれたのですが、襟付け止まりなど微妙な加減を調整するのに従来の膝上げがあったほうがいいので、あらためて私だけ付けてもらっています」
「縫いデータは型ごとに保存してきたので二十五くらいあります。メーカーさんが同じならどの型も針目が同じなので、二十五個のうち六個は自分の標準データとしてステッチ用、しつけ用、粗く縫いたい時用などを設定し、番号で呼び出しデータを使います。データが再現できるだけでなく、このミシンは性能的にも使いやすいですね。パネル操作がもっと良くなればいいなというのが希望です」
「縫いデータは基本的に型変わりしたら必ず蓄積しているのでもう三十ほど保存しています。それで追加の時は呼び出して使っています。ただ、ボビンの糸量の最初と最後や、ミシン糸の種類によってもミシンの調子が変わったりするので、再現したデータをちょっといじったりはしますね」
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