東京中野の縫製工場「辻洋装店」| アパレル工業新聞

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BLOG 2013.11.14

アパレル工業新聞


要望が多かったので全文掲載します(^^)

2013111日付のアパレル工業新聞です。

工場レポート

辻洋装店

本社=〒164-0002 東京都中野区上高田2-10-14 ℡03-3388-0019

アトリエ=中野区上高田1-36-15

創業=一九四七(昭和二十二)年

生産アイテム=婦人スーツ、ジャケット、コート、ワンピース

社長=辻庸介氏

技術者を育成し都内で生産

メード・イン・ジャパンのアパレル生産工場が残っていくには、人材育成、技術の継承が不可欠だ。東京・中野区にあるプレタ工場として知られている辻洋装店には、服作りが好きな若者が全国から集まる。長年積み重てきた高い技術力と、真剣に技術者養成に取り組んでいるからだ。三人の子息も入社し、後継者も育っている。

全国から入社志望者集まる

中野区上高田の住宅街にある辻洋装店。一九四七年に注文婦人服店として創業、七六年に現在地に移転したのを機に婦人プレタアパレルとの取引を本格化した。現在、人員は五十二人(パート・アルバイト含む)で、すべて日本人。本社にパターン、裁断、プレス・出荷部門があり、約三百㍍離れたところに三階建てのアトリエと呼ぶ三十五人の縫製部門がある。

辻庸介社長が理事長を務める東京婦人子供服縫製工業組合はピーク時に約九百社が加入していたが、現在は百社程度に減少。しかも新規に学卒の社員を採用している企業はわずか数社と言われるほどになってしまった。こうした中で同社は毎年五~七人の新卒者を採用し続けている。

「我々の業界も縮小し工場が少なくなってきた。しかし、技術を身につけて仕事ができる会社にしていかないとモノ作りが継承できず、結果的に自分の首を絞めることになる。だからどんな時期でも人材育成に力を入れてきた」と辻社長。今春入社した一年生が七人、二年生が五人、三年生が三人、四年生が五人、五年生が二人、六年生が五人、七年生が二人、残りがそれ以上のベテランや七、八人のパート・アルバイトという人材の層がそれを裏付けている。

かつては新卒者の採用は高校生が中心だったが、十年ほど前から専門学校、大学になっているのも大きな変化だ。同社では応募者に対して、六月から九月までに五日間のインターンを実施し、それを受けた人だけで最終試験を行う。会社や社員、仕事の内容などを事前に知ってもらうのが目的だが、応募者は東京だけでなく九州、広島、大阪など全国から集まり、多い時で約五十人、今年も三、四十人が参加したという。このインターンを受けて最終試験に応募してくるのは、それでも毎年採用枠の三倍くらいの人数になるそうだ。

4社で「縫製基礎コース」導入

採用した人材を育成するため同社を含めて都内工場の四社では、四年前からセコリジャパンスクールとタイアップした新人教育向けの「縫製基礎コース」を導入している。これは二〇〇八年四月にスタートしたジョブ・カード制度を採用したもので、正社員採用と人材育成を兼ね備えていることから、新卒者を採用している工場に呼びかけて開始した。

研修は一年間で、前半はセコリのコースでパターンや針使いなど基礎的なことを学び、後半は参加各社のベテラン社員がミシンやアイロンなどの実技を指導する。講師として今年は同社から里平玲子統括部長、田尻正子アトリエ主任、日比野朋子班長が出向く。

里平さんは工業用パターンを毎年担当。一部のパーツだけとしながら、「ユトリや縫い代の必要性と入れ方を教え、生産性、品質を上げるためのパターン作りを説明しています。学校ではやらない内容です」。田尻さんはジャケットの最終工程である袖付け、裏付け、まとめを受け持つ。「年々教える側も学ぶ側も、もっと良いものをと求めるレベルが高くなっています。最終なので難しいのですが、出来るだけきれいに上がるように教えています」。

日比野さんはワンピースのファスナーの裏付けとベンツの裏付け工程を指導するが、「ファスナー付けでは裏地にユルミが入り、そのユルミが均等でなければファスナーが反り返ったり曲がります。一年目にはちょっと難しい工程ですが、最後にはみんなできるようになります」。

辻社長は「新入社員でまだ仕事にも慣れてない時期で大変。それに学校で勉強してきたのにという声もある。でも、結果的に終わるとみんなの評価は高い。この制度は日本人を雇用するのが条件で、そういうことをやっている会社が力を合わせて技術者養成を継続している」と強調する。

日常の仕事も技術教育の場だ。同社のアトリエでは一つの班でスーツやジャケット、コートを“丸縫い”、完結する。一つの班は四~五人で、必ず一年生も配置。少人数で仕上げることで、一人一人のスキルアップにつながる。班の中でOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)を行い、若い力をみんなで育てている。また、一年生から四年生を対象に年二回、社内で技術試験を行い、技術レベルをチェックする。服作りが好きな若者が同社を志望するのも、確かな技術が身に付くからだろう。

父を見てきた3兄弟

 縫製工場にとっては後継者不足も大きな課題だが、同社は人材育成を通じていいモノ作りを追求するという父である辻社長を見て育った三人兄弟が入社し、それぞれの持ち場で頑張っている。長男で専務を務める吉樹さんは四十三歳で、営業・スケジュール管理、裁断を担当し、四十歳の次男将之さんが出荷スケジュール管理をするプレス部主任、三十六歳の三男豪さんがアトリエマネージャーに就いている。吉樹専務は「仕事を切らさないことを一番意識し、新しいお客さんとの取り組みも含めてアンテナを張っている」と話す。「新規の問い合わせも多く、この一、二年、国内の縫製工場が少なくなってきたと感じている」が、一方で東京に工場があることをあまり知られていないという。そのため三人で話し合い、ホームページなどでのアピールに力を入れている。

 将之さんは「素材の難易度は今も進行形だし、服の雰囲気や細かいところまで取引先の求めるレベルは高い。都内にある立地を生かし、コミュニケーションをとりながら品質管理に努めている」と語る。新入社員が多く配属されるアトリエの豪さんは、この一年余り5S活動に積極的に取り組んできた。「5Sを初めて現場の整理整頓が進んだし、みんなの意識も変わってきた。若い人が多いので、刺激すると乗ってきてくれる」と手応えを感じている。

新たに小売りと取り組み

 取引先はジュン・アシダをはじめプレタアパレルがメイン。しかし、新たな取り組みとして最近は二十、三十着の小ロットだが、小売店との取引も始めている。小売店との取り組みでは、パターンや仕様も工場が受け持ち、生地、付属の手配も必要になる。同社はオーダーショップを五年間運営したが、この経験が小売店との対応に役立っているという。

 「日本製の服が欲しいというお客さんが増えてきたと百貨店の人も話している。日本のモノ作りは生き残れる」とメード・イン・ジャパンにこだわる辻社長。国内工場は厳しい環境が続くが、「社長としてやってきたことを三人とも見ている。彼らが力を合わせ、これからのことを考えていく」と期待する。


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